2018年12月25日火曜日

クリスマス・アニメ総決算2018

 Merry Christmas!
 アニメ業界待望の「アニメ総決算2018」が今年も開催されました!

「アニメ総決算」とは・・・
 事前にサークルメンバーがそれぞれ今年のアニメの話数単位でのベストエピソードを10話ずつ選び出し、それらをさらに厳選して24話分を鑑賞しようという企画。


 プラグラムはこちら。


 12月23日の朝の9時、毎度おなじみ私、井口ゆゆゆの家にてアニメ総決算のスタート。
前日は麻雀に勤しみ、エアコンが壊れていて糞寒い中、こたつに寄り集まって寝ていましたが、近所迷惑を意にも介さないオタク特有の奇声が響き渡り開会となりました。


・ゲゲゲの鬼太郎7話「幽霊電車」
 日曜朝の9時といえばこれですよね、最新話の放送時間帯と見事に被っていましたが。ここではブラック企業を揶揄した原作でも人気なエピソードを拝見。(選者:真岡優)


・新幹線変形ロボ シンカリオン47話「適合!!E5×ドクターイエロー」
 特撮の終盤展開を思わせる同時に複数体の敵襲来に、全国の運転手が一致団結する集大成に涙、やはりクロス合体回に外れ無しですね。(選者:井口ゆゆゆ)


 9時台は鬼太郎とシンカリオンの朝アニメ繋ぎでお送りしました。
 せっかくなので昔購入したE5を展開、プラレールから変形するギミックは垂涎ものです。


・ゆるキャン5話「二つのキャンプ、二人の景色」
 一人旅を満喫するしまりん、集団旅をエンジョイするなでしこ御一行、キャンプのスタンスのどちらの良さも抱擁するこの作品の味を凝縮した回でした。(選者:真岡優)


・ヤマノススメ サードシーズン12話「ともだち」 
 常にあおいを引っ張ってきたあのひなたが初めて感じる嫉妬に尊さを禁じ得ません。3話に渡った仲違いの溜めに溜めた解消にカタルシスも一際です。(選者:ざかえふ)


 10時台はきららアニメ繋ぎ、両者ともにアウトドア題材で食事シーンも見事にリンクしていましたね。
 ちなみにヤマノススメはアーススターなのできららアニメではありませんが、耄碌した我々には女の子が出てくるアニメが全てきららアニメに見えていますので区別は付きません。


・TO BE HEROINE5話「闇の襲来」
 全編ほとんど中国語の激震エピソード。光を守るために気違いを演じる母もそんな母を守ろうとした光も、紛れもなくHEROそのもの。OPのジュースの意味に気付かされた時は鳥肌でした。(選者:井口ゆゆゆ)


・悪偶 ‐天才人形‐11話「邂逅のパ・ド・ドゥ」
 誰だこれ選んだ奴。24作品も選ぶと中にはこんなのも紛れてしまいますね。迫真の暗算バトルはこの作品を見た小学生の中で流行ったとか流行らなかったとか。(選者:井口ゆゆゆ)


 11時台は熱烈な中国アニメタイムでした、恐ろしくマイナーなアニメであっても選考対象となるのが我々現視研。
 大陸産は一昨年のTO BE HERO/CHEATING CRAFTなど、発展途上だけど迸るような熱意の感じられる作品が多いですね。


・りゅうおうのおしごと7話「十才のわたしへ」
 藤井七段や羽生前竜王など現実世界でも世間を賑わした将棋を題材とした作品から選定。海大現視研は白鳥士郎氏及び時雨沢恵一氏の政治的思想と一切関係ありません。(選者:monochrome)


・3月のライオン17話「焼野が原①②」
 上の桂花さんの回もそうですが、脇役の活躍回はそれだけで印象に残るものです。前後編ではあるので大変迷いましたが、柳原棋匠の背負う重圧の襷の演出が見事な前半を選びました。(選者:真岡優)


 12時台は時事ネタ特集ということで将棋作品が盛り上がったように見せかける流行の恣意的な生成。
 流行の最先端どころか流行を仕掛けていく側にある我々現視研、前年度もバンドアニメが一世風靡したかのように見て取れる並びで流行を演出し、アニメ業界を裏で牛耳っています。


・ゾンビランドサガ7話「けれどゾンビメンタルSAGA」
 純子ちゃん復活回です。佐賀は一躍ゾンビ大国に伸し上がりましたね。県庁が大手を振っての協賛は珍しい気がしますけど、佐賀には市の概念がないのかもしれません。(選者:悠)


・ソラとウミのアイダ9話「浴衣でラクしい夏休み!」
 待ってました!私の大好きなルビーちゃん回ですね。これ選ばれていることに疑問符が付くのも無理ないとは思いますが、実はこれ最も重要で、後年に振り返った時に、引き締まったリストになっていると感じてもらえるのが、まずこの作品が選ばれているのを見た時なんですよ。要するに時代が評価するべきアニメなんです。(選者:井口ゆゆゆ)


 13時台はご当地アニメということで、期せずしてゾンサガは佐賀市の嘉瀬川河川敷で、ソラウミは尾道市の住吉神社地先でライブを敢行した繋がりもありました。
 尾道はかみちゅやたまゆらの聖地巡礼で行ったことがありますが、佐賀はまだなので一度は訪れてみたいものです。


・ウマ娘 プリティーダービー12話「夢の舞台」
 スズカの復帰レースを経て、いよいよスぺちゃんのジャパンカップ回。日本総大将の外国馬に対する「調子に乗んな!」発言が語り草ですね。そしてなんといっても、夢の11レースを再現した予告、これを観たかった!(選者:井口ゆゆゆ)


・ラストピリオド-終わりなき螺旋の物語-7話「あにまるトモダチ」
 ケモホモに媚びる運びとなってしまいました。ひぐらしパロディから始まって自由奔放に話が進んだラスピリですが、けフ騒動に触れ、株主総会の大いなる意志による円満解決を提示したこの話は、偏にパロディを超えた新たな領域を見せてくれたのかもしれません。(選者:真岡優)


 14時台はもはや恒例となってきた獣人ゾーンでした、実はゾンサガから続く裏テーマにソシャゲ枠という括りもあります。
 ちなみに本日12月23日は、中山競馬場にて有馬記念の開催日。ウマ娘13話にてスぺちゃんの回想で触れられる有馬記念回を流す案もありましたが、12話に。まるで公式コラボできない運営を模すかのよう・・・。


・DOUBLE DECKER!ダグ&キリル7話「復讐するは、ワリにアレ!」
 一話ごとの纏まりが良くてEDが流れると「面白ーい!」と叫ばずには居られないタイバニから続く相棒シリーズ。基本的にどの回も面白いんだけど珍しくシリアス一辺のダグ過去回から選定。(選者:真岡優)


・B: The Beginning3話
 今年はネトフリオリジナル作品も多かったですね、しかもどの作品も濃厚。連続殺人犯のBを追う刑事のパートとカノープスの謎を追う妖魔のパートと二段階でドラマが展開していったのも新鮮でした。この回はIG三大神の一人、西尾鉄也氏が原画を担当していて、その様は紛れもなくA級アニメです。(選者:井口ゆゆゆ)


 勘の良い諸兄らはお気づきのこととは存じますが、中盤に差し掛かる15時台からはお上品な刑事ものが連続。
 ダグキリといいBといい、Bを追うのが刑事の宿命なのでしょうか。
補足ですが、ダグキリについては先日新宿バルト9で開催された先行上映会にお邪魔して最終回を先んじて観てきた上での選定となっています。


・メガロボクス3話「GEAR IS DEAD」
 あしたのジョー連載50周年を記念した意欲作。マンモス西もといポチョムキン東に対峙してゆらりと構えるジョーの姿に、この作品の本質を見出せるのではないでしょうか。(選者:森)


・ルパン三世 PART5 24話「ルパン三世は永遠に」
 ルパン御一行はもとよりアミもエンゾも皆が笑顔で終わる最終回。都市伝説的に囁かれるルパンの素顔に触れられたのもご愛敬。メガロボクスもそうですけど、新しいものを生み出す意欲に満ち溢れていて、これぞ正しいリブートの在り方なんですよ。(選者:森)


 さて、15時台のリブート枠上映中に青木サンタからケーキの差し入れが。
 今年もアニメに感謝しながら、ケーキを貪ります。


・少女☆歌劇レヴュースタァライト8話「ひかり、さす方へ」
 ざかえふ君チョイスですが、この回を選べなかった私の認識が如何に甘かったかを思い知らされました。作中唯一である第二幕まで展開された「孤独のレビュー」で逆さに落下する東京タワー、運命と紐づく輝きの再生産、何を取っても最高で「分かりまぁす」と無限に頷きたくなります。(選者:ざかえふ)


・刀使ノ巫女21話「雷神の剣」
 この回を選べるか選べないかでオタクの力量が測れますよ。刀使ノ巫女を履修してないオタクとの会話って実際なんだか的外れで退屈なものに、感じてしまうんですよね。刀使として頂きに到達して物足りなさを感じていた可奈美の本気、それを上回るタギツヒメの策謀、予想を覆す怒涛の展開に痺れました。(選者:井口ゆゆゆ)


 舞台の小道具である剣(純那ちゃんは弓ですが)を抽象化して最大限組み込んだレビュースタァライト、御箇伝を題材にそれぞれの流派の美を極限まで追求した刀使ノ巫女。
 オタクが大好きな、剣で戦う少女たちの物語の連なりが顕現した16時台は、間違いなく最強の一時間であったことに余念はありません。


・ガンダムビルドダイバーズ24話「決戦」
 まぁ13話「決戦」も良かったですが、ビルドファイターズの頃より描いて来た実機を持ち出してのバトルなので、よりゲーム感のあるこちらを。ガンプラ愛の結晶であるサラちゃん救出回、流されるままだったサラちゃんの意思を確かに感じたのもまたこの回でした。(選者:ざかえふ)


・ハイスコアガール11話「ROUND 11」
 毎回EDの入り方が秀逸なこの作品の中で、選ぶとしたらこの回でしょうか。一世一代の大野の家出、川崎の誘惑に負けじと探すハルオに指針を示すゲームキャラクター達、そこで流れる「放課後ディストラクション」、何度見ても泣かされます。(選者:ざかえふ)


 ハイスコアガールが先に決まり、片方の噛み合わせについて悩みに悩んだ18時台のゲーム縛りですが、ハイスコアガールに負けないくらいの一大スペクタクルだった気がしますね、ビルドダイバーズも。
 そしてネオジオのロード時間、長い・・・。


・SSSS.GRIDMAN9話「夢・想」
 最終回とめっちゃ悩んで実相寺演出再現っぽい円谷作品感溢れるこの回に。この回の怪獣は丸山浩氏デザインのグワームっぽい怪獣も良かった。マジャバの雌雄の区別の付くアカネちゃん流石です。TRIGGER期待の新生、五十嵐海氏コンテ回で、三人の走るシーンは自身で原画も描いたとか。(選者:井口ゆゆゆ)


・プラネット・ウィズ2話「ネビュラソルジャー」
 非日常が日常に溶け込む感じを醸し出すの上手いですよね、水上悟志作品。グリッドマンに続き記憶喪失主人公系ヒーロー枠です。この娘達の話とっても百合百合しくて凄く良かったのだけど、最終回の後日談でいきなり痴女になってて堪え切れず嗚咽したのを今でも覚えています。(選者:cjhmltf-w)


「グリッドマンとプラウィズはロボットアニメ枠ですかい?」
「お前それ解釈違うぞぉ!」


・ゴールデンカムイ22話「新月の夜に」
 凄い面白いアニメ観てるみたい~。小樽から始まった杉元とアシㇼパさんの旅の一先ずの終着点、網走監獄到着回。全ての勢力の策謀が入り乱れて作中屈指の盛り上がりを魅せた回でもありますね。(選者:井口ゆゆゆ)


・宇宙よりも遠い場所9話「南極恋物語(ブリザード編)」
 群馬から始まった報瀬達の旅の終着点、南極到達回。サブタイトルにも冠されている敏夫の恋路なんてただの前座でしかなかった。南極への挑戦を馬鹿にされ続けてきた報瀬達の「ざまぁみろ」が雪原に響き渡るシーンは見ていて爽快感が尋常ではないですね。(選者:007fy)


 長きに渡るアニメ総決算2018の行程もアシㇼパさん達の旅の終着点、報瀬達の旅の終着点を見届け、終幕を迎えました。
 これは後から気付いたことになりますが、両作品ともに、親に会いに行く動機から始まったという繋がりもあり、各作品ごとの繋がりを重視した洗練されたリストに仕上がっていたことに自賛も已む無しです。
 この後は、24作品見終えた余韻に浸りながら、中本にてあるものは南極、ではなく北極に挑み、またある者は口に攻めてきた蒙古を撃退し、近くの飲み屋で選ばれなかった今年のアニメの供養をしたとか。

 総括すると、今年のアニメも面白かった!これに尽きますね。
 やっぱり出来の良いアニメは褒めてあげないと作り手のモチベアップに繋がりませんし、アニメ総決算という大きな目標に向けてアニメを見ていくという受け手の意識向上も図れるという意味では、このイベントは相当意義のあるものなんですよね。
 来年もアニメ業界は良いアニメを作って、オタクはたくさんアニメを見よう!

2018年2月4日日曜日

1月末・耐久カラオケ

 今年もこの時がやってきた。24時間ぶっ通しで歌い続ける地獄の耐久カラオケである。
 お正月の余韻も遠のいて来た1月27日の土曜日は朝の4時、目覚まし時計のベルが戦いの始まりを告げるゴングのように鳴り響く。

 川崎市に所在する某カラオケ店では、朝の5時から翌朝の6時まで、満室にならなければ最大24時間も滞在できることが知られて久しい世の中になった。
 我々は年に2回、1月と6月に24時間カラオケに挑みに行く。
 通常のカラオケであれば3時間程度、深夜カラオケであっても長くても8時間程度がセオリーの一般的なカラオケのスタイルからすれば、1人あたりの持ち時間は果てしなく、歌える曲数も膨大なものになる。
 そう、年2回も24時間カラオケを行っていると、普通は歌う曲が尽きるのだ。だが我々の集団は普通ではない。
 24時間も歌えば、1曲5分と計算しても、全体で300曲に近い曲数を歌うことになる。練習してきた曲を誰かに先に歌われてしまってはレパートリーを削られてしまう。なまじ古い曲を入れてしまえばうろ覚えが露呈し墓穴を掘ることになる。
 数多の危険性を孕み、幾千の心理戦が繰り広げられ、毎回精神を消耗させながら、それでも達成させてきていることからも、常人の域を超えている事は自明の理であろう。
 企画が始まって当初より生と死を実感できる格式の高いイベントとして、この24時間カラオケは君臨し続けている。

 しかしながら気がかりなことが一つあった。我々は真に24時間カラオケを達成していないのだ。
 カラオケのシステムとしては朝5時から入れるが、いつも日和って朝6時以降の入店となってしまう。朝6時以降に入っていたのでは24時間カラオケに滞在したとは言えない。それは24時間に限りなく近い23時間カラオケである。
 そして1日は、24時間である。
 真に24時間カラオケを達成するために我々は立ち上がったのだ。
 朝5時40分、私、井口ゆゆゆがフロントでチェックインを済まし、一人部屋に入る。始まったのだ。朝5時40分。朝6時前から入店したのは今回が初だ。
 新たな伝説、レジェンドが生まれようとしている予感を沸々と滾らせて、デンモクを手に取った。
 最初に入れる曲はもちろん、「More One Night」。終わるまでは終わらないよヒャアアアアアアアと一人で騒いでいた。朝の5時から。
 少し経つと007fyが入室してきた。朝の6時台。どうやらバイクで来たらしい。
 仕切り直して私はもう一回「More One Night」を入れた。ふたりぼっちの世界が回り始めた瞬間である。
 その後、二人でバンドリの楽曲を中心に歌っていき、喉の調子を整えていく。ここでテンションを上げていきたいところではあるが、これから始まる長丁場に備え、二人ともしんしんと歌っていく。まだ先は長い。石橋は叩いて渡りたい。
 続いて、真岡優、cjhmltf-wが遅れて入室してきた。人員の補充は長時間カラオケを成功させる上で何よりも重要となる。
 先発で入っていた私と007fyにもまだ元気が感じられる。今日は勝てる、そんな自信に満ち溢れた朝の9時台であった。
 曲を被らせないように細心の注意を払いつつ、新曲を温存する戦略、作品単縛りで繋ぐ戦略、最初から全力な戦略、様々な戦略で耐久カラオケに対峙する我々の雄姿がそこにあった。
 人数も増えたこともあって一気に負担が減って心に余裕が生まれた私は満面の笑みを浮かべ、しきりに「楽しいね」と口にしながら「More One Night」を歌った。
 時間は15時、穏やかに流れていた時間も真岡優の爆弾発言で急転直下を迎える。「俺ちょっと外出て21時くらいに戻ってくる」「21時!?」
 このまま4人でゆるりとカラオケをしつつ2チームくらいに分かれて川崎大師にでも観光しようと考えていた矢先に人数が減ることを考慮していなかった。
 真岡優は最後に「ポーカーフェイス」を歌って去っていった。申し訳なさそうに出発準備を済ませる真岡優の顔は全然ポーカーフェイスではなかった。

 しかも運悪くカラオケ店の方がいよいよ混み始めていた。システム上24時間以上いられるだけで、満室になれば強制退場である。
 いつ店員に声を掛けられるのかと冷や冷やしながら、悔いが残らないように全力でいぬやしきの「My hero」や十二大戦の「ラプチャー」、NARUTOの「GO!!!」などを歌った。
 これだけ歌われば後は潔く死のうと考えて、NEW GAMEの「JUMPin' JUMP UP!!!!」を歌い終わった辺りで異変に気付く。いつまで経っても店員に退出するようにと声を掛けられない。
 外を見れば結構並んでいる。他の部屋も埋まりつつあった。なぜ死なない?
 そう、入店するペースと退店するペースが微妙な均衡の上で成り立ち、結果的に満室にはならなかったのだ。
 しかしいつ死ぬとも分からない首の皮一枚で繋がった状態でのカラオケは余りに心労に祟った。
 既に12時間が経とうとしている中で、忍耐の限界を迎えたcjhmltf-wが急に帰る準備を始めた。
 「この後に飲み会があるので帰ります」「は?」「流れ変わったな」噛み合わない会話を尻目にこの日一番といえるくらい意気揚々としながらcjhmltf-wは去っていった。
 一度は引き止めたものの、カラオケよりも後出の飲み会を優先させて現場から逃げた不甲斐なさを責める気にはなれなかった。
 ただ虚しさのみが積もる空間で私は「More One Night」を歌った。
 19時、当初は朝6時から居る予定だったN氏がぬけぬけと腑抜け顔を晒しにやってきた。
 遅すぎる。カラオケが始まってから半日を過ぎての入店だ。
 たかだか10時間程度のカラオケとも呼べないお粗末な学級会で彼は満足なのだろうか。
 しかも開始早々選曲したのは、私や007fyが既に選曲済みの「My hero」や「ラプチャー」であり、遅れてきた上に曲を被らせる始末。
 一体何をしに来たのだろう。

 ついには真岡優の帰ってくる21時まで持ちこたえることが出来た。
 しかも思わぬ朗報が入る。真岡優の同期である森さんが耐久カラオケに参戦してくれるとのことだった。
 人員の増強は何より有り難い。途中退出の咎などは一瞬で消え去った。私には森さんが天使が差し伸べた救いの手のように感じた。

 開始から既に18時間、ここまで寝ずに踏ん張ってきた先発組に限界の色が見え始める。
眠い。眠いのだ。
 この状況に慣れている私はなんとか意識を繋いでいるが、今回初めて6時台から入店した007fyなんかはもう駄目だ。
 一人寝袋を敷き完全に寝る体制に入っている。ここを実家か何かと勘違いし切っている。
 しかも「テルーの唄」や「君を乗せて」などジブリの名曲バラードを選曲して、こちらまで死に誘って来る。
 ところが、死んでも歌わされるのが我々の24時間カラオケのルールだ。
 騒音の中、うとうととしかけたところでデンモクを渡される。「あぁ、そっか、入れなきゃ」そう言ってまた死ぬ。
 平和の国・日本で最も死の概念が近いのは富士樹海と子の刻を過ぎたこの室内であろう。
 朝2時、この世にあるアニソンを粗方歌い尽くしたのではないかと思えてきた辺りで、 007fyが歌っているときに流れる映像を変更できることに気が付いた。
 氷菓の「優しさの理由」で昭和20年代~のニュース映像を流してから、曲を経ることに段々と年代が上がっていき、彼の番が来る度に我々は何故かアニソンを聞きながら昭和の暮らしを回顧することになった。
 「優しさの理由」でマッカーサーが君臨したり、「YUME日和」で戦後の貧しい生活が写し出されたりと、妙に意味深な歌詞とのマッチ具合で、見る人が見れば怒る不謹慎さを呈していたが、それは置いておいて、カラオケの映像はいよいよバブル景気も終期に差し掛かり平成に突入しようとしていた。
 最早カラオケの内容より流れる映像の方が楽しみになっていた我々であったが、テレビ画面に写し出されたのはなんと平成を生きてきた我々であった。
 歴史の重みを感じざるを得ない。第二次世界大戦を経て、高度経済成長を経て、バブル崩壊を経て、今の我々があるのだ。
 写し出された我々の顔を認証して武将風のスタンプが画面に押される。
 ここまで長きに渡る戦いを続けてきた我々にまさに相応しい。
 よくもこんな面白いアイデアを眠さが限界を超えたこの状況下で打ち出せたものだ。
 笑いのピークを迎えたまま、勢いを保持したまま、残り1時間となったところで、恒例の1番飛ばしが始まる。
 フルで歌えば1曲5分だが、アニメサイズである1番飛ばしをすれば1曲1分30秒程度。曲数で換算して3倍の収穫が望める。
 ここまで来て最早曲数を数えては居ないが、歌った曲は300曲を優に超えているだろう。
 森さんの「Stand up!!!」に始まり、グランドフィナーレに相応するアニソンをどんどん入れて最後の力を振り絞るように盛り上がる。

stand up!!!/てさぐれ部もの
空に歌えば/僕のヒーローアカデミア
ステップアップlove/血界戦線
more one night/少女終末旅行
know know know/銀魂
rising hope/魔法科高校の劣等生
情熱フルーツ/アクションヒロインチアフルーツ
deep in abyss/メイドインアビス
adorenaline/亜人ちゃんは語りたい
belief/タブータトゥー
rally go round/ニセコイ
fullscratch love/フレームアームズガール
ハッピーマテリアル/UQHOLDER
カラーズぱわーにおまかせ/三ツ星カラーズ
synchrogazer/シンフォギア
スクランブル/スクールランブル
グッドラックライラック/アニメガタリズ
うまるん体操/うまるちゃん
naked dive/無彩限のファントムワールド
golden life/アクティヴレイド
かくしん的めたまるふぉーぜ/うまるちゃん
熱色スターマイン/バンドリ
ignite/ソードアートオンライン
星空ランデブー/石膏ボーイズ
ライブオン!/ライブオン!
せーのっ/ゆゆ式
ときめきエクスペリエンス/バンドリ
INSIDE IDENTITY/中二病でも恋がしたい
Touch Tap Baby/ハッカドール
あえいうえおあお/ひなこのーと
Sparkling Daydream/中二病でも恋がしたいかーてんこーる/ひなこのーと
ROCK OVER JAPAN/輪るピングドラム
花ハ踊レヤいろはにほ/ハナヤマタ
サバンナを越えて/ジャングル大帝
真赤な誓い/武装錬金
動く、動く/少女終末旅行
天使のしっぽ/天使のしっぽ
はじめてガールズ/わかばガール
ラプチャー/十二大戦

※「ラプチャー」は通算3回、「More One Night」は通算5回歌われた。

 朝の6時、こうして終わりになると丸1日居た環境にも愛着が沸き名残惜しさが増してくる。
 思えば1日でこれだけのドラマに出会える日もなかなか少ない。辛いこともあったがその分楽しさも見い出せた。
 まるで人生だ。カラオケとは人生の縮図である。
 今回初めて24時間カラオケを達成することができた。今までなんだかんだで24時間に限りなく近いカラオケか、或いは、途中退場を余儀なくされてぶっ通しとはいかなかったので、今回の成果は大きい。
 1日は達成した。次の目標は1年だ。1年間ぶっ通しで歌えるように、今から曲のレパートリーを増やしておこう。